『聖地・菅平遠征』

2017/08/23

 畏れ。人が生きるうえで、持ち続けたい崇高な感覚。自分の力だけでは到底及ばないことを悟り、祈りと感謝に心を澄ませる。そんな対象が場所や景色である場合、しばしば聖地と呼ばれる。

 楕円の聖地・菅平高原。7月31日、平工ラグビー部としてはおそらく初めてこの聖地に足を踏み入れた。合宿ではなく、今年は弾丸日帰り遠征。


 どの方向を向いても、キャベツ畑と
H型のポール。菅平の町は100を超えるラグビーグランドを持ち、日本中からラグビー人が集う。並ぶ店はラグビーショップばかり、お土産のクッキーも饅頭も当然のごとく楕円型。楕円形の器に入ったラーメンはその名も「ラガーメン」、通りを歩く人の9割以上がラグビー関係者だ。

 7月末に小・中学生が合宿を行い、8月1週目から高校チームが上り始める。次第にレベルが上がっていくのが自然にできた流儀。2週目から各県ベスト8レベルが増え、中旬には花園常連校ばかりとなる。下旬にはほぼ大学のみだ(ちなみに社会人は海外か網走が主流)。


 今回の遠征は7月31日だったので、残念ながら菅平的には「空白期」。町は閑散としており、いつものラグビー選手でごった返す独特の雰囲気は味わえなかったが、来年以降に夏合宿で訪れる世界のイメージを持つことはできただろう。
雨続きだった菅平も、この日は久々の快晴。強運は新参者のアルタイルズに対する、菅平の神様の計らいに違いない。

 6時半に平塚を出発したバスは、10時半にグランド到着。待ちかまえる静岡高校・静岡東高校の連合軍とのゲームに臨んだ。1000mを超える標高で空気は薄く、この日は珍しいほど気温が高い。しかも長時間移動直後。決していいコンディションではなかったが、初めて見る菅平の景色に選手たちの目は分かりやすく輝いていた。


 キックオフ前の整列。まず目の前に並ぶ静岡連合の体つきが平工より数段以上たくましく、苦戦は予想された。静岡高校は静岡県で決勝まで進んだり、東海大会の常連となるなど、名の知れた強豪校。しかし顧問の移動に伴ってか、この1~2年で急激に部員数の減少に苦しみ、この日は静岡東高校の生徒や
OB大学生が加わってのチーム編成となっていた。


 キックオフ直後から怒涛の如く静岡連合が攻めまくる。トライ直前まで攻められたが、リュウトやショウゴらを中心に意地の
DFでしのぎ、最初の20分1本目を「0対0」で終えることができた。

 2本目は五分五分以上に攻める機会が増えた。敵陣ゴール前で迎えたスクラム。リュウトとカズキがその場で考えて最良のアイデアを生んだ。それまでのサインプレーを布石とした狙い通りの動きで先制トライ。2本目を「7-0」のリードで終えた。

 3本目、菅平合宿ラストゲームの最後の20分とあって気合がみなぎる静岡連合に対し、平工はメンバーを大きく入れ替えた影響は大きく2トライを奪われ、「7-12」で終えた。


 残念ながら最後に逆転負けという結果となったが、チームとしては素晴らしい気迫のプレーの連続だった。ほとんどの選手がラグビーを始めたばかりの1年生。やっと
ゲームのやり方を覚えたものの、実力も練習も全く積み上げられていない。そんな実情よりもはるかに立派なプレーを連発し、接戦を演じた。



 時計の針は13時。クールダウンをする間もなく、バスに飛び乗って「順調なら行けるかも」の計画だった聖地の中の聖地・ダボスへ。記念碑のある山頂で、円陣を組み校歌を斉唱した(行きのバスで覚えたばかり・・・)。

山頂からの景色を楽しむ間のなく、急いで下ってバスに乗車。今度は中心地付近で土産物屋めぐり。来年の買い物意欲を高めた?




 14時50分、バス出発。往路同様に復路も渋滞なし。19時過ぎに学校に到着。前代未聞の「菅平日帰り弾丸遠征」は、運にも恵まれて理想の計画通りに終えることができた。


カズマサ

『菅平は初めて行った場所でまず初めて感じた事が広くて自然がすごい広い場所だと感じました。

そして、自分達の代では行けないと思っていたので、行けたことがすごい嬉しかった反面、ラフボロ戦の捻挫で20分しか出れなかった事がとても悔しかったです。

また、行き帰りでみんなで練習した校歌も、試合の後で忘れてしまってあまり上手く出来なかったですがとても楽しくて、1・2年生は来年合宿で行けてみんなと楽しく練習と試合ができるって思うと、とても羨ましいと感じました。

また試合に関しては、結果は勝てませんでしたが色々学ぶところがあり練習に繋がる部分がたくさんありました。なのでそれを生かして、また練習を頑張って大会まで走っていきたいです。』


ショウタロウ

『今回の菅平弾丸ツアーは非常に楽しかったです。試合には出ていないのですが、選手達にとっても、良い思い出になったと思いますし、試合面でもこの猛暑の中20分×3と言う過酷な状況で良い点悪い点それぞれあったと思うのでその課題を超えてstep up して欲しいです!』


リュウト

『今回静岡高校と試合をして、前半は体力があったのでみんなをリードして試合を進めることができましたが、後半になり自分のことでいっぱいになってしまい、チームをリードできなかったのでトライを取られてしまったり、前半できていたことができなくなったと思いました。

サインプレーやディフェンスの時の課題が見つかったので、次からの学校の練習で意識して改善していきたいです。

日帰りの弾丸ツアーだったんですが、チーム全体とても成長したし、とても楽しく一致団結した1日になりとても良かったです』


ひな

『菅平は神奈川よりも涼しく、地面が芝生だったので、とてもやりやすい環境だったと思います。今日戦った静岡高校のマネージャーさんは、常に選手に気を配り、いつ選手が怪我をしても柔軟に対応が出来ていて、とても見ていて勉強になりました。

最後に、帰りのバスで平工の仲間達が私にサプライズでシャツを下さり、今までで一番嬉しかったです。』



 これから迎える8月は個人のフィジカル、スキルを伸ばすことに専念する。先に全体像を理解するための練習やゲームを行ったので、各自がやるべきことはイメージしやすいはずだ。

 菅平でのゲームであらためて感じたが、このチームには熱く素直なハートがある。努力を積み上げれば、きっといいチームになる。一人ひとりが自分の意志で心・技・体をレベルアップできれば、ラグビーもゲームも、もっと楽しくなる。

 悲壮感を出すことなく、明るくポジティブに努力する文化を作りたい。


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