日英親善試合・vs Loughborough school 『楕円と世界』

2017/07/29

「えっ?なんで?うちが??」

 驚きや興奮とは明らかに異なる硬いリアクション。この平工がまさかイギリスから遠征で来日するチームとゲームをやるなんて、話を聞いても全く現実感が持てなかったのだろう。


 

 アルタイルズ元年の夏、世界と繋がるチャンスは訪れた。前任校を率いて今年3月にはイングランド遠征を行うなど、もともとイングランドとの縁を持っている。勝敗でもチーム強化手段でもない。ラグビーを通じて世界と繋がる喜びを体験すること。地球の遥か先に住む異国の同級生たちとの交流すること。こんな最高のチャンスを逃すわけにはいかない。

 来日チームの強さは過去2年間の対戦でおおむね想像できた。平工では100点ゲームになることは必死だ。それでも知人のイギリス人から打診がきたとき、初心者1年生ばかりのチーム事情をかえりみず、二つ返事で承諾した。「なんとかする手段はあとで考えればいいや」と。


 選んだ「なんとかする」手段は、平塚選抜チームの編成だ。私立の好チーム・平塚学園と平塚工科の合同チーム。というより、平塚学園という確かな実力のチームを主軸に、平工の選手たちがちょっとだけ乗っけてもらう感じ。これならゲームも成り立ち、平工の選手たちも関わることができる。「平塚学園にとってもいい経験になるはず」と身勝手な解釈を押し付けたのかもしれないが、平学さんからもこのアイデアの快諾をいただいた。


 対戦相手のラフボロスクールは学校内にラグビーチームを15個程度持ち、そのうちのファーストチームとセカンドチームが来日。ファーストチームの相手は関東大会準優勝の目黒学院が、セカンドチームの相手を平塚選抜が受けた。

会場は「日本ラグビー史上初の試合が行われたクラブ」と言われているYC&AC。山手の超高級住宅街に古くからそびえ立つ、伝統と格式の高い名門スポーツクラブだ。このクラブの敷地に入りプレーできることだけでも、実はたいへん名誉なことだ。


 

 当日、キックオフの1時間ほど前にラフボロスクールがYCACに到着(外国のチームにしては早い)。イギリスのチームとしては明らかに体が小さい(と言っても日本の高校よりは大きい)。この日が遠征最終戦だが、花園上位校の深谷(埼玉)や関西の古豪・同志社高校、洛北高校などに敗れているという話からも、平塚選抜が気持ちを込めて戦えば接戦に持ち込めることが予想できた。

 ゲームは一進一退の互角の展開だったが、前後半ともにミスが多い平塚選抜に対して、重厚な縦突破を繰り返すラフボロが優位に立った。勝機は十分にあったが、僅差で敗れた。




 しかし、ここで終わらずさらに素敵な展開は続いた。ラフボロのコーチからの素晴らしい提案を受け、なんと最後の20分は適当にお互いのジャージを交換し、日英ごちゃまぜチーム親善試合となった。

 スリーチアーズ、花道、ジャージを交換しての集合写真、盛大なアフターファンクション。プレーの出来はともかく、国際親善試合の味わいを満喫することができた。



セイタ

『今回のラフボロ戦は全てが新鮮で新しいことの連続でした。

イギリス人は背が高いから手や足が長く日本人に通用するプレーも簡単に手を出されてターンオーバーされてしまうだとか諸々。でも全力で楽しめた試合でした!!!

アフターマッチファンクションでは、他校やラフボロの出し物を見て、Altairsにもこんな出し物があればいいなと思うものが多々ありました。他校、他国の人と触れ合えてとても楽しいものになりました!』



マキ

『今回、平塚の代表として海外の選手とプレーが出来て、とても貴重で楽しい交流が出来きました。また、今回の交流を大切にして今後も他の学校と楽しくプレーしていきたいです。』



 

 積極的なプレー、積極的な交流はあまりできなかったかもしれない。それでもラグビーを通じて世界と交わった記憶は、生涯忘れることができないだろう。言葉はほとんど通じなくとも、一つの楕円球を追って誇り高きイングランド人たちと戦い、握手を交わし、共に笑った。


 熱い暑い夏休みに突入。この日のご褒美のような思い出を糧に、全員でアルタイルズを進化させていく。