松岡組始動 『痛み深きレッスン』

2020/12/28

 11月、強烈な個性が溢れる豊島組が引退し、アルタイルズ松岡組が始動した。昨年同様、組織目標と戦績目標のダブルゴールを定めてから、それを率いるリーダー決めの投票。その結果を受けて、キャプテンは入学以来学年リーダーとして学年を牽引してきたエイシに、バイスキャプテンとマネージメントリーダーは、共に冷静な思考力と厚い人望を持つユウタとセナに決まった。
 チーム内にラグビーに対する意識の差が明らかに存在した過去からの進化を目指して立てた組織目標は「Bind」。すなわち結束。全員がどんなときも固くバインドし合い、誰一人諦めることなく努力し合う集団を目指していく。

 戦力については未知数。花園予選のスタメン15人中6~7人が残っている。しかし豊島組には、圧倒的なスペシャルパワーが何人も存在した。規格外の圧倒的パワーで何もかもを凌駕したツバサ、超高校級のパス力と鉄壁のDF力を持つ司令塔リョウ、ボールを渡せばインゴールまで空を飛ぶかのごとく駆け抜けたイッキ、超人的なタフさでタックルとジャッカルを繰り返すハルキなど、1年生の頃から主軸としてチームを牽引した大駒たちがいなくなった。その影響がどれほど大きいのか、新人戦で深い傷をもって痛感させられることとなった。

 松岡組発足以来、新しいアタック方法とDFシステムに挑戦してきた。「このメンバーなら」と採用した戦術は、実に魅力的でやっていて楽しい類いのものだった。大学のトップチームがTVで美しく披露しているようなスタイル。理想型がスマートで分かりやすい。練習するほどに成長も感じていた。しかし、その落とし穴に気づいていなかった。

 いつしか戦法を正しくやることだけが目的となり、目の前の相手と勝負する感覚が消えていた。格闘と球技の両要素を持つラグビーだがその比率は半々などではなく、格闘に勝ったうえでしか球技的スキルは活かされない。ブレイクダウンとタックルというコンタクトプレーへの執着がいつの間にか薄れ、「システム」の習得のみに気持ちが捕らわれていた。ついには、「身体を張る」というラグビーの根源までもが消えかかっていた。

 横須賀と修悠館と行った練習試合では「俺たちの代はいけるのでは?」の甘すぎた勘違いを叩き潰された。そして迎えた新人戦初戦の湘南戦。それでもまだ「身体を張る」ことにフォーカスできず、「合理的にうまくやれば・・・」の期待と準備は、深い心の傷となる屈辱的大敗を招いた。実はスキルもテクニックも全く足りていなかったアタック方法は、湘南伝統の魂のタックルの餌食となった。「動く物体は誰であれ俺が突き刺さる」の意欲や覚悟が備わっていないDFシステムは、湘南の優秀なSOによりあっけなく解体され、ズタズタに切り裂かれた。


「今日はできたことなんかあえて探す必要はない。この屈辱感と深い心の傷の痛みだけをごまかさずに持って帰ろう。一人ひとりが自分だけにベクトルを向けよう。」そんな話をして、会場を去った。

 新人戦予選プール最終戦の相手は七里ヶ浜。湘南相手にラスト1分まで逆転可能な大接戦を演じた好チームだ。湘南に30点以上の差をつけられて大敗した自分たちがチャレンジャーの立場であることは明白。準備期間の5日間は、もうシステムや戦術は二の次で、「身体を張ること」「前に前に突き進むこと」前週の湘南戦でやっと気づいたラグビーの肝だけを意識して練習した。

 迎えた七里ヶ浜戦。ゲーム運びはつたない。プレー選択が悪い。それでもチームに「どうしても勝ちたい」の妖気が漂っている。先週までは「スペースを作り、正しく判断してスペースに運ぶ」練習のみを2ヶ月間ずっとしてきたのに、この日は横のスペースに関心すら抱かず、ボールを持ったら前に前に逃げずに突き進んだ。

気持ち的に本当に辛かった6日間、だからこそ松岡組29名のBindが急激に固まり、ついに初勝利をつかみ取った(24-5)。



エイシ
『今の自分たちに足りないものは個人個人での勝つ気持ちだと思います。特に最近自分はチームのために体を張れていません。タックルで肩を怪我をしてびびってしまいタックルが怖くなってしまいました。ですが七里ヶ浜戦では少し前とは違い体を張るプレーがたくさんできました。これからはキャプテンとして自己犠牲の精神を忘れずにチームで一番体を張りチームのみんなに勝つ気持ちを背中で見せられるようキャプテンになりたいと思います。』

ユウタ
『松岡組最初の新人戦が始まり初戦の相手が湘南高校でした。この試合で負けてしまいとても悔しくてこの悔しさをバネにしてこの1週間練習をして七里ガ浜高校と戦いに勝つことができました!FWはセットプレーやゴール前を中心に練習して、試合に生かすことができてとても自信に繋がりました!これからはこの嬉しさや悔しさを忘れずに練習に取り組んで行きたいと思います!プレーや的確な指示でFWみんなを引っ張れるように日々努力していきます!』

セナ
『新人戦お疲れ様でした。初戦はボロボロに負け、2回戦目は勝ちました。この代は先輩に頼り過ぎていて練習のメニューやラグビーの戦術などの理解が浅かったです。そこの甘さで勝てなかったと思います。でも、この一週間は特に少しでも上手くなろうと放課後や練習後残って足りないところを集中して練習しました。FWはラインアウトが上手くいかなかったので毎日完璧にできるまで何回も練習し、その結果2戦目では上手くいって勝因の一つになりました。正直試合が終わって勝った喜びより負けた悔しさの方が大きいですが、勝ててホッとしました。これからも頑張っていきましょう!』


 勝敗を左右する根源に向き合わせてくれた新人戦。「なんとなく」の努力では何にもならず、リアリティと覚悟の伴った本気の努力を重ねていきたい。もちろん、いつでも明るく笑顔が絶えないアルタイルズ本来の魅力は絶対に忘れずに。

 2021年もアルタイルズの応援宜しくお願い致します!







練習試合 vs横須賀、修悠館横須賀