悲願成就 『この日』

2020/09/21

 死力を尽くし、勝って涙を流す。そんな経験は生涯何度あるだろうか。
 9月20日、昨年のワールドカップ直前にオーストラリア代表がキャンプを張った城山競技場。アルタイルズ豊島組は、この代の一大目標として掲げた「打倒平塚学園」を見事に果たした。

 3年前、西相地区で圧倒的な力を持つ平塚学園は、この地区大会は「下級生が経験を積む大会」と位置づけていた。私の就任1年目の萩谷組は、全力を尽くしたが下級生チームにすら勝てなかった。
 2年前、闘将・内藤龍斗率いる内藤組は「Aチームを引きずり出して勝つ」を年間の一大目標に掲げた。最高のモチベーションで臨んだ平塚学園戦。勝利をつかみ取った。しかし、相手のAチームは出してもらえなかった。Aチームの大半を占める3年生たちは地区大会の会場には来ず、別の地で別の活動を行っていると耳にした。「引きずり出して勝つ」は叶わなかった。地区大会初優勝を称えたが、なんとも言えない悔しさが残った。

 1年前、ついにAチームを出してもらえた。鎌田組はチャレンジャーとして大いに健闘した。しかし、確かな実力差を感じた。心理的にも「勝利を信じて戦う」ところまで到達していなかった。同点で迎えたラストワンプレーで突き放され、夢破れた。
 そんな短くも濃い歴史の上にある、この日の決戦だった。
「豊島組の攻撃力を解き放てば、絶対に相手を崩せる」の自信はあった。しかし、コロナで新人戦以降の公式戦が一つもない今年、相手の実力が全く分からない。さらに、1週間前に予定していた唯一の練習試合が荒天予報で中止となった。平塚学園戦は、実は2月の練習試合以来なんと7ヶ月ぶりのゲームだった。未知の領域ばかり。自信が確信に変わらない。
 分かっていることはただ一つ。この試合が豊島組の1年間の最大目標の試合であること。やるべきことは、自分たちのラグビーを出し切ることだけだった。そんな一大決戦。掲げたゲームテーマは「力を解き放つ」。
 実はかなり嫌だった雨予報は、ほぼ外れた。最高の会場、最高のライバル。舞台は完全に整った。

 ゲーム展開は五分五分。前半はほとんどの時間で優勢だったが、後半はその真逆となった。詰めが甘くスコアを逃したアルタイルズに対し、平学はチャンスを逃さずスコアした。相手の圧力を肌で感じ取ったのだろう。ゲームテーマは体現できず、消極的なゲーム運びから出られなかった。残り10分、逆転を許した。
 逆転されて「攻めるしかない」の割り切りが、ついに力を解放させた。5点のビハインドで迎えたラストプレー。ゴール正面に魂のグラウンディング。ゲームキャプテンのリョウがコンバージョンを決めると同時に、ノーサイドのホイッスルが鳴り響いた。



コウスケ(キャプテン)
『今回のゲームは、僕たちにとって特別なゲームでした。年間目標に掲げていた打倒平学!先輩達の思いも胸にONE TEAMの精神で戦えたゲームでした。しかし何度か心が折れそうになった所もありましたが、みんなで声を掛け合って食らいついていく事が出来ました。ノーサイドのホイッスルが鳴った時僕たちは、自然と強く抱き合ってしまった。この経験は、一生忘れる事が無いだろうと感じました残りの期間、現状に満足せず花園予選に向けて日々努力を惜しまず活動していきます!


リョウ(ゲームキャプテン)
『1年前に立てた目標「打倒平学」。この目標のために日々の練習を頑張ってきました。前半は自分たちの流れで試合を持っていくことができましたが、後半は相手のペースで持っていかれ、残り約10分で逆転されてしまいました。しかし、気持ちだけは負けていませんでした。最後のトライはみんなの気持ちがひとつになって生まれたトライだと思います。勝てて本当に良かったです!
次は花園予選。気持ちを切り替えて残り少ない日々の練習を頑張ろうと思います!みんなお疲れ様!花園予選も絶対に勝とう!』


ツバサ
『地区大会で平学に勝つ事が出来ました!約1年前に決めた目標の打倒平学を達成出来たこと、何よりチームが一つになれたことがめちゃくちゃ嬉しかったです。
花園予選まであと約1ヶ月時間は少ないけど、今までより少しでも良いアルタイルズを作って、後悔なく引退できるようにしたいです!』


 毎年9月、地区大会で対戦するライバル平塚学園。この勝負はアルタイルズにとっての早明戦であり、バーシティーマッチ(オックスフォード対ケンブリッジ)だ。
 よきライバル平塚学園。集団として心から尊敬することができ、実は同士であり同志だと思っている。我々に生きる理由とストーリーを授けてくれた。また1年後も、この日を何より大切にしたい。
 豊島組の道は、あと少し続く。あと少ししか続かない。残されたわずかな時間、アルタイルズの文化をさらに進化させ、この日よりさらに強固な絆で結ばれたワンチームになることができたなら、このチームは大事件を起こせるかもしない。






1年生試合 vs平塚学園。

経験者数では多く劣勢の代ながら、前半の12人制で同点。後半の7人制で勝利。