花園予選連勝で48年ぶりのベスト16入り 『笑顔と愛と執念で』

2019/10/07

 9月29日、ついに鎌田組最後の闘いである花園予選が開幕した。初戦の相手は同じ地区の仲間として共に切磋琢磨してきた西湘高校。プレー経験のある専門顧問がいない状況の中で、長年にわたって十分な部員数とレベルの高いプレーを維持している好チームだ。専門顧問がいても上手くいかないチームが多い現状、西湘は成功モデルとして県下だけでなく県外にも誇れるクラブだと思っている。そんな素晴らしい集団とゲームができることに感謝し、全力でゲームに臨ませてもらった。ゲームテーマはこの代のチームスローガンでもある「クオリティ」。

 夏に一度受験勉強に専念した3年生たちをチームに戻し、チャレンジャーとして向かってきた西湘高校はやはりいいチームだった。開始直後、アルタイルズがコンタクトの局面で明らかに優位に立った。これで「何となくいける」の甘い感覚を捨てきれずにプレーしたアルタイルズは、西湘のしつこいDFに加え、汗で異様に滑るボールに対してミスを連発。雑なプレーでなんと15回もボールを失うというひどい内容だった。最終スコアは「38-5」。DFで崩されることはなかったが、ボールキャリアーのクオリティは極めて低かった。一言で言うなら「反省」のゲーム。1週間ですぐに修正が必要だ。

 

 10月6日、2回戦の相手は神奈川総合産業高校。と聞くとピンとこないかもしれないが、改称前の学校名は「相模台工業高校」。漆黒のジャージをまとい、神奈川の絶対王者として(私が高校生だった約25年前)花園2連覇という偉業を果たした伝説のクラブだ。そんな輝かしい伝統の下、今も指導体制は充実。経験と実績のある優れた専門指導者(教員)3名でチームを作っている。部員数は多くないが、スクール経験者も複数プレーしている。部員の数という規模の差だけで勘違いすると、とんでもない目に遭うだろう。前週の反省を胸に刻み、今度こそ「クオリティ」にこだわって自分たちのラグビーをぶつけにいった。

 開始早々コンタクトで優位に立つが、今度こそ甘い感覚は捨てきれていた。ゲームプラン通り、シンプルに練習通りのプレーを継続した。たくましさと自信もついたのだろう、私からの「これだけ強い追い風があるのだから、もっとキックを使って敵陣にいこう」の助言を完全に無視。ただしそれでミスすることもほとんどなく、攻め続けてゲームを支配した。

 ペナルティーがらみで一度だけゴール前まで迫られたが、いつも通りの自信あるDFを焦らず継続。守れば守るほどエリアは回復した。リザーブも6名投入。マサチェロやレオなど次代を担う前にこの代のうちに勝負を懸けるべき下級生たちも躍動した。メンバー外の部員たちも全員大きな声を張り上げて自分たちの誇れる代表に気持ちを送った。MGのひなは相手選手が足を痛めるや否や、選手よりも鋭い反応速度と猛スピードで駆け寄り、相手選手を助けようとした。

 最終スコアは「87-0」。相手キャプテンの執念ともいうべきカバーDFなど、総合産業の最後まで諦めない姿勢は素晴らしかった。それに対して全員が最後まで緩めることなく自分たちのやるべきことをやり抜いた好ゲームだった。
 県協会記録誌によると平工のベスト16入りは1971年以来48年ぶりの快挙。48年前は参加チームが少なかったため、1回勝ってベスト16だったので、2つ勝ってのベスト16入りは70年の歴史で初めてのことかもしれない(正確な情報があれば教えてください)。そんな歴史の創造も嬉しいが、それよりもありがたい評価の言葉をいただいた。

 それは試合後のこと、このゲームを観るために他県から来た年配の方がこう口にした。
「今日の試合を観て、私も頑張ろうと思った。なんか勇気をもらったよ。ありがとう。」
 アルタイルズにとって最高の評価だった。


 次の相手は、シード校・県立横須賀高校。奇しくも私の前任校だ。県立ナンバー1に君臨する伝統強豪校。今年は高校日本代表候補選手を有し、経験者数も過去最多かもしれない。OB会からの巨大なバックアップを受けながら、猛烈な努力を積み重ねている。同じ公立高校としてリスペクトすべきクラブだろう。

 しかしリスペクトすることは、戦前から敗北を受け入れることではない。ジャパンが前回大会の南アフリカに続き、このW杯でもアイルランドを破った。あのウルグアイがフィジーを破った。10回戦って1回勝利かというくらいの力差なら、周到な準備と勝利に対する執着心があれば、その1回を手繰り寄せることができることはW杯でも証明されている。

 7月の抽選会以降、この勝負のためだけに準備をしてきた。夏合宿では他県の強豪に「横須賀戦想定」で臨み、戦い方を確立した。夏までは(想定通り)フィットネス不足でロスタイムに負けることがあったが、9月に「最後のピース」であるフィットネス強化に初めて着手。ゲームに直結するよう工夫された様々なフィットネスメニューと格闘した。65分間、ゲームよりも高い強度で戦い抜ける力と自信を掴んだ。同時に、チームワークが一気に濃密なものとなった。


 10月20日12時30分、その瞬間まで楽しんでやるべき準備をやり切る。

 「クオリティ」「小事大事」「ワンチーム」
 1年前に鎌田組が掲げたこれらの軸を大切に。鎌田組らしく。笑顔と愛と執念で。


カイリ(キャプテン)
『先日の試合で勝てて本当に良かったです!!何より0点で抑えられたのが一番良いと思います。チームで油断せず、ゴールラインを守りきれたので大きな自信にもなったと思います。攻めの態勢も常にトライを取るための選択ができていたので良かったです!!
次の対戦相手は間違いなく強いと思うので、同じように。油断せず、自分たちのラグビーをやり通したいです!頑張ります!!』

ゲンキ
『平工48年ぶりにベスト16に入ることが出来ました!これも応援してくれた方々のおかげです。6日に行われた神奈川総合産業戦は少しミスがあったりしたがみんな前に出てタックルし、アタックも圧倒したり、トライとった時はみんなで喜びあったりとても良い試合でした。次は県立横須賀戦です。自分は8年間やってきた事を全部出し切って勝ちにいきます!アルタイルズのラグビーで全力で挑みます!』

カイ
『昨日の試合は自分たちのフェイズアタックがしっかりできていて、リンケージもしっかりできてたので大外があまりトライにつながり勝てた試合だと思います。1回戦2回戦とも自分たちの小さなミスでボールを失っていたので、次の横須賀戦ではそういう小さなミスをなくし、ノーペナルティで自分たちのラグビーを継続していきたいと思います!あとはチームのためにも、今まで支えてくれた人のためにも、最後の1秒まで全力で戦い絶対勝ちます!』



1・2回戦ともにゲーム前日はリザーブジャージを懸けたセレクションマッチ。


3年の秋に開花。安定したパスワークで緩急あるリズムを作るシオン。

3年間努力を続け、ついにチャンスを掴んだイッペイ。

ボールのグリップが甘い!!


県大会では見たことのない光景。アフターマッチファンクションを実現。




1年生も3名が出場。

ゴール成功率100%を達成! ヨシキが11分の11。カイが2分の2。






この大会から採用した応援「アルタイルズコール」。イングランドの強豪校ウォリックスクールの「ウォリックコール」がモデル。

2回戦なのに秋葉台という素晴らしい環境でゲームができたのも幸運でした。