菅平合宿2019 『クオリティの変化』

2019/08/09

 菅平。通えば通うほどこの地へのノスタルジーと愛着は深まる。年に一度、この山々を仰ぐと「菅平の神」たるものの存在がいとも簡単に信じられる。キャベツ畑の中に点在する100面を超えるラグビー場。通りを歩く屈強な身体を持つ少年たちの表情からは、たいてい自信か悲壮感のどちらかが漏れている。8月5日、アルタイルズ誕生から2度目の菅平合宿が始まった。


1日目

 7時平塚工科高校発。バスは順調に進み、12時前に菅平高原の宿、城山館に到着した。
初戦の相手は大阪の高津高校と東京の日比谷高校(三つ巴)。実はこの初戦こそがこの合宿で一番の強敵だと想定していた。何しろ高津高校は全国区の超強豪校がひしめくラグビーどころ大阪で、今年はシード校となっている。日比谷高校は全国に名を馳せる超進学校。明晰な頭脳を持ち、努力できる才能とひたむきさを兼ね備えた部員たちを、関東選抜を率いた頭脳派の名監督が率いる。旅行気分でフワッとゲームに臨むと、完膚なきまでに叩きのめされることは必至だ。

 まずは高津戦。アタックは自分たちのスタイルである程度は崩すことはできたが、仕留めに行く前に我慢の継続ができなかった。DFはタックルだけを切り取ってみると翔吾中心に大いに健闘しているが、ゲーム全体のマネージメントの部分で完敗。トライ数0-2(25分)で敗れた。
 続く日比谷戦も同じ構図で支配され、タックルで戦い続けたが0-2(25分)で敗れた。フィットネスが切れた日比谷戦はペナルティーも連発。自ら首を絞めた。2戦とも全く同じ原因での敗戦。薄々気づいてはいた弱点を完全につかれた。強いメンタルを持ち、タックルやブレイクダウンなどで大いに対抗できただけに、悔しい結果となった。

 Bのゲームはもともとの力差が大きかった。自分たちと全くステージの違うレベルの相手に対し、自分たちなりに抵抗。しかしここでもAと全く同じ部分で自滅を続け、2戦とも敗れた。マサチェロやリュウヘイ、セナたちの献身的なプレーや闘争心など、光はあった。

 夜は昨年同様「ラグビーの発祥・歴史・文化・精神」についての講義と、ゲームの映像ミーティング。かなりハードな相手で身体はすでにボロボロに近いが、初日だからか悲壮感はなく、雰囲気は悪くない。夜11時を過ぎても他の部屋に集まって遊びたがっている・・・。



2日目
 午前中はこの合宿で唯一の練習。昨日のAB共通する課題について重点的に取り組んだ。後半はBCゲバ(部内マッチ)。出場時間が十分に確保できない選手たちで12対12のゲーム。午後に向けたセレクションの意味も込めたものだ。当然のことながらレベルは低いゲームだが、レオの躍動感、ユウタの気持ちのこもったコンタクトなど、見どころは大いにあった。

 午後は昨日同様に三つ巴。小山台高校(東京)と千葉南高校。ともに優れたスタッフと潤沢な数の部員を有する好チームだ。前日の明確な課題の克服を意識して臨み、70%程度は改善することができた。初戦の千葉南に対しては、キックオフ早々に安いDFでトライを献上したが、落ち着いて自分たちのスタイルに持ち込んで逆転勝ち。サイン選択やゲームメイクが前日より遥かに良くなった。
 続く小山台戦も安定したゲーム運びで勝利することができた。昨日は2敗。この日は前日の課題をある程度解消しての2勝。小さな課題はいくつも挙がるものの、自信と共にチームに元気を生み出す勝利となった。

 Bゲームは1勝1敗。敗れた小山台戦は力差のかなりある相手に、必死で食らいついたが攻守ともに完敗。勝敗は自力で決まる。つまりは平塚で積み重ねた実力だけが勝敗を左右することがよく分かったはずだ。それでも亮は人生初のビッグタックルを決め、アレックはやっとやっと目覚めはじめ、タツヤはチャレンジエラーを重ねるたびにプレーを掴んでいく。勝利は遠いが、何もかもが収穫のビギナーたちにとって非常に有意義な経験となっている。
 夜の映像ミーティングを終えて就寝。ゲームは勝利しても宿の洗濯機争いは完敗だったらしい。23時、前日とは全く異なる廊下の静けさ。明日はいよいよ合宿のピーク。午前午後のダブルヘッダーだ。



3日目
 午前中の相手は検見川高校(千葉)。前日のいい内容を継続しつつ、自分たちの戦い方をより鮮明に理解するために、ゲームテーマを「アルタイルズスタイル」として臨んだ。
 開始から明らかに動きも思考も鈍い。分かりやすく疲労が影響しているようだ。イージーエラーとペナルティーが多く、ゲームに停滞感が漂った。それでも時間とともに次々とトライを重ね、零封でタイムアップ。前日に比べると、少しぼやっとした勝利となった。
 Bは先ほどのAメンバーの何人も残った相手に対して力負け。今は経験こそが財産と思い、上を向けばよい。


 午後、いよいよ合宿最後のゲーム。相手は県立千葉高校。長年にわたり質実剛健な素晴らしいチームを作っている。ゲームテーマは「チャレンジングチョイス」。ここまであまり試しきれていない特別なプレーをチョイスして、秋につながる経験を積みたかった。
 「強い!」開始早々、目が覚める。強靭なコンタクトプレーにも工夫があり、モール関連も実に知的。ディフェンスも強さと安定感を兼ね備えていた。ゲームは「チャレンジチョイス」を選ぶ余裕はほとんどなく、気力の勝負となった。最終スコアは「7-7(20分ハーフ)」。最終戦を気持ちよく快勝とはいかなかったが、最後の最後に非常にタフなゲームを経験することができた。
 苦しいゲームが多かった合宿。全試合が終わってから知ったのだが、2日目の千葉南と3日目の県立千葉は関東大会予選で千葉県5位だった。


 悪天候のため素早く宿に帰り、最後の夜。今年もリラックスして楽しむことを最優先し、ミーティングも行わず完全フリーとした。宿での過ごし方や振る舞いなど、自分たちできっちりと判断し、集団として動けるようになっているように感じた。


4日目(最終日)
 この日の朝の散歩だけは、走りもせずボールもなしで本当に「散歩」。寝坊もなく、暗い雰囲気もなく、リラックスしたいい雰囲気。朝食と部屋掃除を終えると、聖地の中の聖地・ダボスの丘を登って練習だ。昨年は霧の中だったが、今年は晴天。軽めの復習練習の後、上り坂ランパス3本と推定400mランパス1本。記念撮影の後、校歌を斉唱した。

 この世の裏側にはいまだ戦争も飢餓もあり、いま我々がスポーツに打ち込むことができている環境は、実はとんでもなく幸せなこと。自分を支えてくれる多くの方々、自分を取り巻くありとあらゆる環境への感謝を込めて歌いあげ、素晴らしき合宿を締めくくった。



カイリ(キャプテン)
『今年も最高に楽しい合宿になりました。楽しいだけじゃなくて、他の高校と練習をしてとてもいい経験が出来ました。最後の合宿で少し悲しい気もしますが、間違いなく、過去最高の合宿だったと思います。さらに、チームがチームとして強くなれたと思える合宿だと思いました。この先もずっとこのチームで頑張っていきたいと思いました。』


カイ(バイスキャプテン)
『合宿初日はもともと不安だっが箇所がうまくいかず負けてしまいました。それは最後まで課題になってしまいましたが、残りの4試合はしっかり自分たちで判断し、コミュニケーションを取り合いながらできたので良かったです。最後の県立千葉高校は惜しくも引き分けでしたが、Aチームだけでなくチーム全体がワンチームになれた感じがしたのでこれからもワンチームを最後まで継続していきたいです。』


ゲンキ(バイスキャプテン)
『最後の菅平合宿に行きました!初日の試合ではケガをしてしまい自分にとってとても悔しさが残る試合でした。2日目の試合は自分たちよりも体格差がある2チームと三つ巴をし、みんなの魂のこもったディフェンスとアタックでどっちとも勝つことが出来ました!
3日目の試合は午前と午後に、1試合ずつと番ハードな日でした。午前の試合では自分たちのラグビーが出来てトライも取られず勝つことが出来ました。午後の試合は去年も試合した高校とやりました。去年は惜しくも負けてしまったが、勝つことは出来なかったが引き分けで終わることが出来ました!

今回の合宿は去年と比べて試合のことや宿でのことに、明らかに成長を感じる合宿でした。勝った時の喜び、宿やバスの中での楽しみ、とてもいい最後の菅平合宿を終わることが出来ました。残り少ないアルタイルズでの活動を思いっきり楽しんでいきたいと思います!』



シュンスケ(マンオブザキャンプ2019)
『三年目の最後の合宿だったので、みんなが良い思いをして合宿を終えられるように気張って行きました。特に、ゲーム中もいつも以上に自分から出来るだけコミュニケーションを取ったり、宿での後輩との会話を大事にしたりしました。合宿に行く前は長いと思っていた4日間も、終わって見ればあっという間だった気がします。

最終日にマン オブ キャンプに選ばれた時は、まさか自分が選ばれるとは思っていなかったので、事実を受け止めるのに時間がかかってしまいました。ここから花園予選までも、頼りない先輩の自覚はありますが、少しでもみんなの役に立てるように頑張っていきます。』


アレック(FW賞)
『自分の課題である、タックルとプレー中コールを意識して試合に挑みました。まだタックルの姿勢や引きが甘いので、その点を練習で改善したいと思いました。そして最後に賞をいただいてAメンバーに入れるようさらに頑張っていきたいと思いました。』


セナ(BK賞)
『今回の合宿ではBチームのスタンドオフとして試合に出場しました。試合は練習通りにはいかないことが多くありましたが、自分からたくさんチャレンジをしてアピールをしました。その結果、タックルの本数でチームの上位になれました!そして、先生からも評価してもらい、とても嬉しかったです。良いところが増えて伸びてきているBチームをさらに強くして引っ張っていきたいです。
また、合宿ということもあって普段よりも先輩たちとの会話が増え、とても楽しくいい思い出になりました。』


コウスケ(藤原先生特別賞)
『菅平に行くと別の世界に来たかと思う位の文化の違いでした。その1つが挨拶です。行き交う全ての人に全力で挨拶する事です。こういった光景を見ると菅平に来たと実感します。
また強いチームとの試合です。僕はケガのためプレイヤーとしてでは無くマネージャーとして試合に参加しました。ラグビーの試合も熱いのですが、試合の後の洗濯も熱いバトルが宿で繰り広げられてました。こういった全てが菅平の最高の思い出です。』


マサチェロ(特別敢闘賞)
『今年の合宿は2年生に進級して先輩としての合宿だったので、少し心配でしたが、4日間通してみた今、3泊4日はとても短いものだと感じました。僕は全体的にBチームの選手として試合に出ましたが、とてもやり甲斐のある試合で、後輩を勇気づけたりアドバイスや指示をするのも初めてでした。自分なりに頑張った結果、敢闘賞を受賞しとても嬉しかったです。』


 初合宿を行った昨年や夏休み前までと比べて、何もかもスムーズに進んだ今回の合宿。それは3年生を中心に、自ら考え、情報を共有し、集団として動くという組織の力が高まった証拠だろう。かつては3年生任せが多かった荷物運びなどの雑用も、2年生が気付いて動く回数が格段に増えた。昨年は指摘の後に並べるようになったスリッパも、今年は最初から並べるのは当たり前。他の宿泊客への気遣いから歩くスペースを確保した並べ方をするなど、自ら考えて行動できるようになってきた。練習やゲーム運びだけでなく、文化や集団のクオリティが明らかに高まっていることを証明した合宿となった。
 
 約2年半かけてアルタイルズを創ってきた鎌田組。一段ずつよき文化を築いている。
W杯の影響で、今年は花園予選が約3週間早まった。初戦まで残された時間は、僅か1か月半。これからの時間は、表現できないほどのスピードで過ぎ去っていく。

 「クオリティ」「小事大事」「One team」など、鎌田組発足当初に立てた目標に立ち返り、最後の季節を突き抜けていく。


総勢46名

1年生

2年生

3年生





今年から副顧問の藤原先生を囲んで。

早朝の散歩




弾丸ツアーで駆けつけてくれた池永トレーナー

セカンドジャージお披露目!東京藝術大学デザイン科の優秀な教え子がデザイン。






ネタバレしているのでサプライズではないけど、MG3人にサプライズギフト。



 学年間の距離がぐっと縮まり、チーム力だけでなく一人ひとりの今後のモチベーションも上がる素晴らしい合宿となりました。
 ご理解ご協力、まことにありがとうございました!