日本ラグビーの至宝来たる 『憧れこそ』

2018/08/22

 8月4日、菅平合宿の前の最後の練習に、信じられないほどのビッグゲストが平工に来てくれた。
 齋藤直人さんと中野将伍さん。ともに早稲田大学ラグビー部の3年生(1年時からチームの主軸)。今後の日本ラグビー界を背負っていく至宝だと断言できるスーパースターだ。

 齋藤直人さんは桐蔭学園出身。3年時はキャプテンとして花園準優勝。高校日本代表、U20日本代表、ジュニアジャパンとこれまで全てのカテゴリーの日本代表に当然のように選ばれてきた。そして今春、JAPANA代表(JAPAN選考の意味を持つチーム) に選出され、ニュージーランドでスーパーラグビーの若手チーム相手にトライやゴールを決めるなど大活躍し、勝利に貢献した。6月にはサンウルブズにも練習生として呼ばれるなど、JAPANヘッドコーチのジェイミー・ジョセフはじめ多くの人が次のJAPANの9番を担う存在として厚い期待を寄せている。 ※8月29日発表でジャパン2次スコッド入り!

 中野将伍選手は、福岡県立東筑高校時代に高校日本代表だけでなく、その上のジュニアジャパン入りを果たして話題を呼んだ選手(ジュニアジャパン=将来を期待される若手中心の代表チーム。20代半ばのトップリーグの若手選手が多い)。フジテレビの有名番組「未来モンスター」にも特集された怪物。昨年の試合中継でも解説者が「このスピードでコンタクトできるのは日本では中野選手だけでしょう」と舌を巻いた。

 そんな二人を平工に連れてきてくれたのが早稲田大学3年生の宇野明彦。横須賀高校の教え子だが、彼自身も県立横須賀から桐蔭学園だらけの神奈川県選抜に抜擢され、現役で進学した早稲田大学でも1年時からレギュラーでゲームに出場した。3年生になった今春に部全体からの厚い期待と信頼から副務(マネージャー)に就任してプレーからは離れているが、選手としても一流の力を持つ。

 ちなみに齋藤さんは私が柏陽高校監督時代に、柏陽ラグビー部OBであるお父さんが当時小学生だった彼を何度か高校に連れてきていたので、個人的には小学生の頃から知っている関係だ。高校生より遥かに上手い小学生だった・・・。中野さんは東筑高校ラグビー部の遠い後輩。OB戦などで何度か話したことがある関係だった。

 9時30分、3人がグランドに到着。ラグビー情報に疎いアルタイルズ選手たちではあるが、齋藤さんと中野さんについてインターネットで予習していたこともあり、表情から心躍っているのが伝わってきた。
 自己紹介の後、練習開始。3人が仕切るボールゲームの後は、15対15を見ていただき、アタックやDFにアドバイスをもらった。最後の数本はBチーム側に3人が入ってもらった。あの齋藤さんからパスを受けたり、中野さんと身体を当てたり、日本中がうらやむほど贅沢な経験となった。
 15対15の後は、齋藤さんの元でスクラムハーフはパスとハイパンとのセッション。ハーフ以外は中野さんの元でキャッチパスの練習。2人とも本当に優しく、生徒たちの目線まで下りて丁寧に指導してくれた。






 菅平合宿の後は、慶應DAY。8月19日、来てくれた二人は慶應大学蹴球部(慶応大ではラグビーを蹴球と呼ぶ)OBの中村敬介さんと小田嶋啓太さん。

 中村さんは慶應高校で1年時からレギュラーSOとして活躍。決勝では桐蔭学園にチームは敗れたものの、(1年生なのに)個人的に桐蔭と互角以上に戦っていた。慶應大学では度重なる大きなけがに悩まされたものの、伝統の黒黄ジャージを身にまとい、何度もビッグゲームに出場している。「ファンタジスタ」という言葉がマッチする魅惑的なプレースタイルは、見る者全員の心を躍らせた(だから私も彼のファンだった)。大学卒業後は一流証券会社を退職し、現在は医学部に編入学して医者になるべく勉強している。
 小田嶋さんは桐蔭学園のSHとして花園準優勝(早稲田齋藤選手の2つ上)。高校日本代表候補にも選ばれている。大学では黒黄ジャージを着て活躍し、卒業後の現在は一流銀行員として働くエリートサラリーマンだ。


 神奈川選抜を通じて知り合いだった中村さんからの連絡を受けたのが話のきっかけ。この日はもともと相模原RSさんが来て、私がモールセッションを行う日。その間BKは各自で個人練習をするつもりだったが、中村さんが来てれるというので、有り難く感謝の丸投げ。2時間みっちり、BKは中村さんと小田嶋さんによるラグビー教室に参加させてもらった。二人とも本当に丁寧に、分かりやすく色々なスキルのポイントを説明してくれた。

中村敬介さん
『吸収する速さにビックリしました。真面目に取り組めばスキルは伸びてくると思います。自分の時間で個人練習してスキルを高め、全体練習ではこうして楽しんでプレーすることが一番成長につながると思うので、何より楽しむ気持ちで頑張ってください』

小田嶋啓太さん
『基礎スキルをいくつか教えたけど、タッチフットなど実践で発揮できないと試合では使えません。基礎のところは自分でしっかり練習して、タッチフットや試合形式の練習でそれを発揮していく、それを繰り返せば上手くなっていきます。それをずっと継続してください。半日間ありがとうございました。』


 高校生ラガーマンにとって最も効果的なエネルギー源は「憧れ」だ。今回来てくれた英雄たちのようなプレーはできなくとも、彼らのオーラ、スキル、優しさはきっと大きな憧れになる。そして彼らだって、少年の頃にTVで見た誰かに憧れて努力を重ね、きっと今がある。



桐蔭、早稲田、ジャパンAでも「精密」と絶賛されてきたプレイスキック。