内藤組始動 『俺はやる』

2017/12/17

 花園予選で日大藤沢に敗れた翌日、アルタイルズ「内藤組」が始動した。
 キャプテンは悩む余地なくリュウトに決まった。前代からゲームリーダーを務め、絶対的存在感でチームをけん引。誰よりも努力し、考え、身体を張る漢だ。

 バイスキャプテンはセイタ。何しろ頭が切れる。常に自分で考え、判断し、端的に周りに伝える力がある。私がAと言っても「いや、そこばBで」と即座に返せる人間。リーダーシップだけでなく、周囲を見渡し、気を遣い、下働きや雑用は全く躊躇せず自分から行動を起こす世話人でもある。そんな信頼できる両リーダーを軸に、様々なアイデアでチーム改革を進めている。

 
 充実の表れか、始動からあっという間に約2ヶ月が経過した。部員が誰も脱落しないことが大前提だ。無謀に焦ることなく、悲壮感がでないように注意しつつだが、着実に一段ずつ階段を上っている実感がある。3年生がたった2名しかいなかったので、代が変わっても「またやり直し」感はなく、そのまま上に積み重なっている。

 これまでの10年以上の高校ラグビー指導経験で、一日練習が終わったその瞬間、「今日は絶対に成長したな」と感じる日と、そうでない日があった。
 正直言うと、昨シーズン(2ヶ月前)まではたったの一日すら確かな成長を実感できた練習はなかった。何しろ4月は「部員6名」からのスタートだった。2ヶ月間で26名まで増えたが、その数を維持することがどれほど大変で工夫と思慮のいることか、過去の経験で痛いほど分かっている。部員数維持を最優先し、心身に負荷のかかる強度の高い練習は一度もやらなかった。
 
 内藤組になり、練習後に「成長の実感」を持てる練習が続いている。6名だった4月に現2年生が立てた「一度は勝ってみたい」という憧れ、ひそかに私が立てていた「新人戦に単独チームで出場」の目標は、両方とも順調に叶えることができた。

 
 前代からの「ビッグブラザー制」に加え、内藤組では「10人リーダー制」「ペア計画ウェイト」「目標設定シート」など、受け身でなく一人ひとりが主体的に考え、お互いを高め合う取り組みも始まった。
 ハード面でも、ウェイト機材や夜間照明などの環境整備が劇的に進み、質の高いトレーニングができるようになった。
 
 チーム運営のシステムや練習環境など、組織づくりにこだわってきた。しかしここから先、進化か停滞かを分けるのは、間違いなく「組織」ではなく「個」だ。このチームの流れにいれば自然と各自が成長できるわけではない。一人ひとりがよく己の現状を見つめ、弱さや甘さをごまかさず、キャプテンの眼差しの如く誠実に努力の継続ができたなら、夏過ぎにはきっとチームの種類が変わっているだろう。
「一人きりでも努力ができる選手が一番成長する」は経験上確信を持っている真実だ。
 組織が整い、集団として上向きな今、大切なのは個の「俺はやる」だ。


リュウト
自分はラグビーを始めて1年半で、分からない事もあるし、めんどくさがりな性格なのでキャプテンとして少し不安があったけど、初めての試合、新人戦!運が悪いのを引き継いでしまったのか
対山手学院!全然歯が立たないと思っていたら、意外と敵陣でも戦えてたと思うので、自分達なりに自信になったと思います!
目標は打倒平学なのでそれがしっかり達成できるように、個人個人の体作りやチーム全体のスキルを高めていきたいです!

セイタ
内藤組が始まってから2ヶ月経ちますが、これまでのアルタイルズのように練習の雰囲気などは変わらずとても良い雰囲気で出来ていると思います。これからはアルタイルズ全体としての課題を一つ一つ解決して、今年の冬休みみんながいいプレーヤーになり色々な人に認めらる理想的なチームになるように頑張りたいです
 

 好守に「戦えた」の実感をつかめた山手学院戦の直後の話。ある部員が「なぜ僕は出れなかったんですか」と、一人でドアをノックしてきた。理由を説明すると、真っ赤な目から大粒の涙がこぼれていた。ある部員は、つい2時間前のゲームで誰より走り、体を張ったことなどすっかり忘れたかの如く、涼しい顔でウェイトに励んでいた。ある部員は大好きなラグビーを続けるために、疲労きった足を動かし、6時間ものアルバイトに向かった。

 こんな素敵な若者たちが生きるチームだ。そんな個が増えていけば、きっと強くなる。



2ヶ月前に「0-97」だった日藤に、新人戦は「5-31」。

花園予選翌日のミーティングでキャプテン交代。ハギからリュウトへ。

ラグビー部専用機材でウェイト