新人戦終了 『アルタイルズが目指すもの』

2018/12/28

 鎌田組始動からあっという間に3ヶ月が経過した。いつの間にか初志を忘れて万事甘くなってきたとはいえ、雰囲気を大きく崩すことなく試行錯誤しながら挑戦の日々を送っている。12月下旬、最初の大会となった新人戦3試合が終了した。

 アルタイルズとは何を目指す集団なのか。この一大テーマについて、実はこの1年半答えがふらついていた。海外のスポーツ文化とは大きく異なる日本の学生スポーツ特有の「部活」ではない、新しい集団を目指していた。スポーツは人格育成手段でも鍛錬でもなく、本来楽しいからやるもの。部活という日本特有の文化にはびこる忍耐や過度の集団主義、強制を排除し、純粋にスポーツを楽しむクラブを目指した。6人だった部員は、あっという間に48人にまで急増した。外から見れば万事成功しているように映っただろう。内実は、明らかに失敗だった。

 テキトウニ楽しむラグビーは、4~5回も体験すればすぐに楽しくなくなった。英語で「プレジャー」と訳されるような軽薄な楽しさは、今の若者を取り巻く他の娯楽に勝てなかった。スマホゲーム、テレビゲーム、バイク、バイト。それらと並列されたラグビーは、多くの部員たちの価値観の中で下の地位に置かれた。夏を境に練習は欠席者だらけとなった。部員同士、特に上級生が下級生をサポートする体制もあっけなく破綻した。次第に頑張りたいと思って練習に参加しているメンバーたちの心も、来ない人間たちへのストレスで疲弊していった。他にない魅力溢れるチームを目指したが、魅力はむしろ薄れていった。

 仲間と共に目標達成に向かって努力すること。自分とチームに必要なことを思考し、多少心身に負荷がかかるが、さぼることなく己を鍛えること。自分の姿を嘘偽りなく見つめ、仲間を仲間と認めること。悔しさ、屈辱、挫折、ごく時々ある小さな喜び。辛くて重い気がしていたが、実はよく笑っていた日々。3年生の秋、全てが終わって振り返ったときに「あぁ、楽しかったなぁ」と身体の底から沸き起こる実感。目指すべき「楽しさ」は、やはりこっちだったのだ。 

 鎌田組に入り、多くの部員に続けるのか部を去るのか、選択してもらった。耳にピアスの穴をあけ、スマホゲームとバイクとバイトに熱を注ぐ青春を否定する気はない。しかし我々アルタイルズは「高校生活でしか手に入らないもの」「帰宅部では手に入らないもの」を獲得するための集団と定めた。名簿上の部員数はかなり減ったが、グランドに集まる人数は実は変わっていない。


 新人戦、キャプテンのカイリが選んだストーリーは「いばらの道」だった。初戦の相手は強豪私立である桐蔭中等教育学校。期末試験の翌日であったことや、電気工事士の試験と日がバッティングしたことの影響などもあり、当日即席メンバーではどうにも戦えなかった(14対43)。

 続く相手は、毎年公立ナンバーワンを争う実力を持つ強豪・湘南高校。客観的には50点以上の差をつけられての大敗が予想されたが、互角に戦うことができた。前半を7対7で折り返したが、後半あと1歩でトライというチャンスを連続して逃した。逆にキックパス2発を決められた。想定外?の惜敗(7-19)。昨年までベスト8にいた強豪校相手に、キックパスの2本以外は1トライしか奪われなかった。


 最期の相手は川和高校。湘南高校戦で掴んだ自信は、過信にすり替わっていた。川和が湘南に「0対64」で敗れていたこともあり、多くの選手が勝手に勝利を当然のものだと勘違いしていた。実はこの試合、相手が初戦のケガで人数不足となったために、こちらから選手を貸して行う「練習試合」と形式を変えていた(公式記録は平工の不戦勝)。過信と油断、さらに練習試合という響き。勝負の世界の厳しさを味わうことになった。

 開始早々から、ゲームは全く成り立たなかった。ペナルティー、またペナルティー。直近の2試合でほとんど問題とされなかった箇所で、延々と、延々とペナルティーを取られ続けた。後半はレフリングに対して過度に恐れた結果、全くタックルに向かえない状態となった。殴られ続けるサンドバックのように川和のアタックを浴びた。レフリーへの対応力。それも実力だ。

 その件とは別に、川和高校は素晴らしいチームだった。磨き上げられた素晴らしきアタック、キックオフ前から伝わってきた闘争心。万事において、我々は勝つ資格がなかった。「前半に勝負を決めるペナルティーを狙わず、後半ロスタイムに逆転サヨナラ負け」。8ヶ月前にこの向上高校のグランドで向上高校から受けた強烈なる痛みを、デジャブのごとくまた繰り返してしまった(19対21)。

 3戦3敗。それも最後はひどい負け方。これが「遊び」なら、きっと最悪の経験だ。しかし今の鎌田組にとっては、むしろ意味のある結果ととらえることができる。全く勝てなかったこの結果をストーリーの序章とし、悔しさや不甲斐なさを炎と変えることができれば、きっとこれからの日々は輝く。苦しい道のりほど、目標を達成したときの感動は大きなものとなる。いばらの道ほど、自分もチームも鍛え上げられる。

有名なポップスの歌詞
「高ければ高い壁の方が 登ったとき気持ちいいもんな まだ限界だなんて 認めちゃいないさ」

アルタイルズが目指す「エンジョイ」は、挑戦の日々だ。