決戦を制しセブンス県ベスト8入り『歓喜と失意、そしてご褒美』

2021/06/21

 滅多なことではない。大きな目標を掲げ、それを見事に成し遂げた。こらえようとしても、湧き出るように笑顔がこぼれた。6月19日、保土ケ谷ラグビー場。全国7人制大会県予選で、アルタイルズは県立ナンバーワンに君臨し続ける横須賀高校を破り、初のベスト8入りを果たした。

 この大会の抽選会で横須賀と対戦することが決まった夜、私(松山)がかけた1本の電話から始まった。

「ご無沙汰してます。セブンスでどうしても勝ちたい相手がいるんですけど。」
「ご無沙汰。で、いつなら行っていいの。」何の説明もなくとも結論に行き着くところがこの人らしい。電話の相手は福田恒輝。アマチュアクラブ日本一であるタマリバクラブのセブンスチームの代表だ。かつて早稲田で私と何度もハーフ団を組んだ1つ上の先輩。セブンスに関しては日本最高レベルの知識と経験を有する。

 5月29日、福田恒輝さんはタマリバセブンスチームを率いて平塚工科高校にやってきた(タマリバは神奈川所属チームなので県教委コロナ規則においても合同練習が可能)。そのメンバーは豪華などという言葉では言い表せない。清宮監督時代の早稲田で日本一をつかみ取った時の伝説のフランカー羽生憲久さん、同じく早稲田の絶対的エースとしてトライを量産し、南アフリカを倒したあのエディJAPANの合宿にも学生ながら招集された荻野岳志さん、関東学院が大学日本一を決めた決勝のMVP竹山将史さんなど、ラグビーファンなら今でも決して忘れることのないスターたちがズラリと並んだ。そんなタマリバ7sチームと、7対7のゲーム形式で存分に練習させてもらうという、余りにも贅沢な練習となった。


「じゃあ、君たちが横須賀を倒すのを楽しみにしてます」と言い残し、タマリバセブンスチームは平工を去った。そこから3週間、タマリバから教えてもらった感覚やメニューを信じ、セブンスの練習に打ち込んできた。OBチームの胸も借りた。前日の金曜は放課後グランドが使える曜日ではなかったが、自分たちで志願して朝練習に集まった。そこまでやり尽くしての横須賀戦。好守共にやってきたことをほぼ出し切ることができた。28対14の快勝。ターゲットを見据えて懸けてきたから、こんなに嬉しいことはなかった。


 翌日の準々決勝、抽選の結果、相手はノーシードの公立・七里ヶ浜高校に決まった。他が東海大相模、慶應義塾、法政二高など、そうそうたる強豪シード私立だったから、「ここなら勝てるのでは・・・」の甘い気持ちがあった。抽選で相手が七里ヶ浜と決まった瞬間、多くのメンバーがガッツポーズをしてしまった。その時点で負けはほぼ決まっていたのかもしれない。
 相手は想像したよりも強く、自分たちは弱かった。思い返せば1週間前の地区大会でも、平塚学園Aを破った安堵のあとに臨んだ西湘戦で惨敗を喫していた。チャレンジャーとして研ぎ澄まされていないと、スピードもメンタルタフネスもなかった。メンバーで3年生は僅か2人。勝負の経験値も足りなかった。逆転を許し、7対12というスコアで破れ去り、ベスト4という夢物語は泡と消えた。


 前日の歓喜、そして今日の失意。そんな中、うなだれた顔を上げるしかないギフト?が用意されていた。実はこの大会の決勝トーナメントには(部員には一切伝えてなかったが)エキシビジョンマッチが組み込まれていた。準々決勝の敗退4チーム対桐蔭学園。全国2連覇中の桐蔭学園は、前回の全国7人制大会で日本一となっていたため、この予選は免除で全国切符を先に手にしていた。そんな桐蔭学園が「全国に出る前に1~2試合は経験したい」ということで、このエキシビジョンが組まれていたのだ。そんなわけで、アルタイルズは日本一の桐蔭学園と対戦することになった。部員たちにしてみれば、突然。

 相手がここまですごいと笑うしかない。ポジティブになれる。いや、戦えること自体がとんでもない幸運であり、名誉と言ってもいい。七里戦の後にうなだれていた顔は蘇り、「やべぇよ!絶対死ぬよ!」と連呼しながらも、どの目も分かりやすく輝いていた。後半は準々決勝2試合目の敗者である湘南工大附属と全入れ替えなので、桐蔭とラグビーができるは7分1本だけ。それでも存分にあらがう姿を見せた。開始10秒でトライを取られたものの、最終スコアは0-19。抜けないことも、タックルで倒せないことも楽しかった。この大会に向けて頑張ってきたご褒美か。あまりに貴重な経験をすることができた。


 約2ヶ月間にも及んだセブンスシリーズはこれで終了。公式戦のない夏に突入する。この先には、もう最後の季節が待っている。歴代の先輩たちが必ず口にしてきたように、「ここからは一瞬で時が過ぎ、最後を迎える」。
 実はもう最終コーナーに差し掛かろうとしている松岡組が、クラブビジョン「笑顔と愛とプライドのあるチーム」となり、ハッピーエンドを迎えることができるのか。それは「本気」「努力」「気合い」という
シンプルなものに執着できるかにかかっている。



カイオウ(セブンスキャプテン)
私達は打倒横須賀を目標にして、セブンスという未知のスポーツに全力で取り組み、見事横須賀に勝利し神奈川ベスト8を取れてすごく嬉しいです!


ショウタ
『今回のセブンスの大会では横須賀に勝つことを目標に約1ヶ月間頑張ってきました。横須賀は前に練習試合を行った時に負けているので今回も勝てるか不安だったんですが今までやってきたことを出し切り、見事勝つことが出来ました。しかし次の七里ヶ浜戦では思ってた以上に相手が強く負けてしまいました。この悔しさをバネにして次に七里ヶ浜と試合をする時は完勝出来るように頑張りたいと思います。また1ハーフだけ桐蔭とのエキシビションマッチができてとても貴重な体験をすることが出来たので嬉しかったです。』


ダン
『まず最初にセブンスメンバーとして選べられた時はとても嬉しかったです。
セブンスを実際にやってみて、やっぱ先生の言った通りとてもキツかったです。ですがとてもいい経験になりました。実際に試合すれば自分のプレイの何がいけなくて、何がいいのか分かるので次の練習に繋がっていくと思います。そして一番それを感じれたのは七里ヶ浜戦と桐蔭戦です。七里ヶ浜戦では自分の体力のなさ、スピードの遅さが見えてきたのでそこにフォーカスして練習していきたいです。あとセブンスはキツかったですがとても楽しかったです。この経験を15人制でも活かしていきたいです。』