関東大会予選 『逆境のシナリオ』

2021/04/27

 待望の試合、待望の大会。もう1年もコロナで不安定な月日が続いているが、関東大会県予選が無事に開幕を迎えた。振り返れば新人戦、湘南高校相手に屈辱感をこれでもかと味わった。まだ新人戦なのに「あとがない」の空気で臨んだ七里ヶ浜戦、確かな心でつながったワンチームとなり、勝利して喜びと安堵を経験した。その直後に2回目の緊急事態宣言で新人戦は大会途中で中止となった。

 関東大会県予選。抽選の結果、1回戦の相手は新城高校。3年生の数がアルタイルズを上回る13人。その代の入学までは人数がいないチームだったので、13人は入学以来ずっとゲームに出続けている。東海大ラグビー部OBの若手監督が率いる。どう考えても弱い訳がない。
 掲げたゲームテーマは「もう二度と平工とはやりたくないと思わせて勝つ」。前半、まさに完勝の展開。強みを活かし、効率よくスコアを重ねた。29対0で前半修了。後半は手堅いゲームから離れ、一気に爆発を狙った。

 しかしこれが経験値の低さか。勝利がおおむね決まって思い切り突き放そうと思った瞬間、集中力の無いエラーが続き、ゲームが完全に硬直した。タックルも甘くなっていた。たまり続けるフラストレーション。ラストワンプレーで相手にトライを許してノーサイド。歓喜に沸く新城。ひどく苦い後味で引き上げるアルタイルズ。次戦に勝つために、ゲーム後のミーティングでは「今日のゲームで得られたものは、このままじゃまずいという危機感だけでいい」と厳しく締めくくった。



 2回戦の相手、大磯と西相の合同チームは今までは単独チームとしてそれぞれ平工としのぎを削った相手だ。合同チームというより連合軍と呼ぶ方が似合う。3年生の数は合わせてなんと18名(平工のスタメン3年生は8人)。自力だけで比べると劣勢かも知れない。
 そんな中で降ってきたアクシデント。初戦でチーム随一のフィニッシャーであるレツトが負傷で離脱した。さらには例年以上に厳しい勧誘活動(入学者数が例年の2/3にあたる僅か160名程度!)により、平日の練習はほぼできない。
「急に主軸のレツトを欠き、練習もまともにできない逆境。これを乗り越えることができたら、きっと大きな喜びと成長につながる。この厳しいシナリオとその先にある見事な結末を楽しもう」と臨んだ。

 相手が甘くないことも厳しい展開も想定内。まずは0対5とリードされ、前半終了時点で5対5。しかし、この前半でいかにゲームを運ぶべきかを明白につかむことができた。このゲームにおける攻略ポイントとゲームを支配するイメージをハーフタイムで共有し、後半は見事にそれをやってのけた。最終スコアは26対5。もくろみ通り、逆境のシナリオを駆け抜け、笑顔の結末にたどり着いた。




ヒデトラ
『今回の新城、大磯西湘の二戦を終えて僕たちはチーム全体でより良い成長を遂げることができたと思います。四月になり新入生が入学して部活動の勧誘活動などであまり練習時間がなかったり、キーメンバーが怪我をしてしまい練習でもうまくいかないことが増えていたなかで僕たちはここまで勝つことができました。
 新城戦では前半はよかったのですが、後半になりメンタル面で相手に負けてしまい、試合には勝てましたが勝負に勝てた気はしませんでした。そこから短い練習の時間で次の試合にむけて練習に励みました。二戦目の大磯西湘では相手に先制トライをされましたが、そこで下を向かずにチームみんなで気持ちを切り替えて試合にのぞみました。その結果僕たちは勝つことができました。今回の試合で僕たちはチーム全体でメンタル面で成長できたと感じています。』


タクミ
『今回の試合は部活の勧誘の時期と被り、一年で最も忙しいときに少ない練習時間のなか臨んだ試合でした。一試合目は勝ちましたが自分たちのミスからいい試合ができなくて悔しい結果になりました。二試合目の相手は強かったけどチームのみんなが一試合目よりもすごく体を張っていていたし、たくさん声を出していてチームがいい雰囲気で試合を進めることができたので、勝つことができて自分たちの成長につながるすごくいい試合ができたと思います。僕もラインアウトのスローがノーミスだったのでとても嬉しかったです。』


ソウ
『関東予選2試合を終えて率直に言えるのは、勝てて嬉しいです。チームは万全と言える状況ではない中勝てたのはこの先のアルタイルズの成長に繋がると思っています。次の相手は全国レベルとも言える強豪ですが、腹を括って全てを出し切りたいです。終わった時にアルタイルズがさらに成長できるための何かを得て終わりたいです。』


トウマ
『今回の関東予選はどちらも簡単な試合ではなかったなと思いました。でも、みんなが団結して新城戦と大磯西湘合同チームとの試合でいいプレーができたと思いました。今回もみんなにはタックルいっぱい入っていたよと言われたけど、自分的には納得できなかったので次の関東六浦との試合の時にはいつも以上に体を張って、タックルにいっぱいいきたいと思います!』


 3回戦(ベスト16)の相手は近年ベスト4から落ちることのない超強豪校・関東学院六浦。かつて鎌田組が約50年ぶりにベスト16に入ったときに対戦して敗れた横須賀よりも明らかに上のステージにいる相手だ。つまり70年を超える歴史を持つ平工ラグビー部にとっても、5年目を迎えたアルタイルズにとっても、未知の領域への挑戦となる。
 本気で挑みかかるマインドセットが持てるか、負け犬根性で臨んで無様に散るだけか。アルタイルズの歴史にとって重要な一戦になる。