内藤組引退 「激闘でたどり着いたスタートライン」

2018/10/16

 10月14日11時58分、ノーサイドの笛が響き渡り、内藤組の物語は終わった。アルタイルズとして始動してから1年半、クラブの新たな文化を創り上げてきた。
 年間ターゲットしてきた平塚学園との市大会決勝を制して優勝。しかし花園予選の相手はまたも平塚学園だった。市大会の平学は3年生抜きのメンバーなので、実力的には1.7軍くらいだろう。この花園予選は問答無用の1軍。客観的には40点差分くらいは平学が優勢だったのかもしれない。

 最終スコアは「0-15」。後半の半ばまでは「0-5」という激戦だった。ゴールラインを背にしても、この日は魂のタックルを繰り返した。この代を終わらせたくないという強靭な想いが宿ったDFラインからは、妖気すら漂った。
 同じ西湘地区で圧倒的な実力を有する平塚学園。1年前であれば100点近い差が開いていただろう(1年前の花園予選・日大藤沢戦は0-97の大敗)。しかし3年生の選手僅か5名の代にも関わらず、これほどの接戦を演じてくれた。

 後半ロスタイム、最後の攻撃はペナルティーを犯して終わった。しかし平学はタッチキックを蹴って試合を終わらせることを選ばず、非情に徹してトライを奪いに来た。それは「俺らがお前らなんか相手にこんな点差で終わる訳にはいかないんだ」の強い意思表示だった。その裏には、「0-10」で終わらせる情けをかけるのではなく、僅か1年半で急接近してきた隣地の厄介者の芽を摘んでおきたい気持ちもあったのかもしれない。

 そのプレーでトライを許した後のコンバージョンキック。全員が本気でチャージに走り、残り0秒の瞬間まで力を振り絞った。見る者の心を動かす姿だった。アルタイルズとして過去に見たことのない魂のゲームを、内藤組の最後に見せてくれた。




リュウト
『ついに平工ラグビー部を引退しました。長いようで短かった2年半、本当にいい思い出ができました。平学に負けてしまいましたが、本当にここまでいい試合ができるなんて思ってもなくてびっくりしました。
最後の最後にアルタイルズみんなで平学と試合をしているような感じもして、本当にいい試合ができたと思います。

毎日行っていた部室、グラウンドにもう行かないと考えると本当に終わっちゃったんだな~って感じです。多分世界中を探してもこんなに幸せな部長はいないと言っていいほど、幸せな部長だと思います。

最高の仲間、最高の後輩そして最高の顧問とラグビーしたのは人生の中で少しの時間だと思いますが、本当に一生忘れることのない最高の思い出になりました!』


セイタ
『平学との試合が終わり、私を含む多くのアルタイルズのメンバーが涙を流していました。他のみんなの涙の理由は分からないが、私の涙の理由は試合に負けた悔しさではなく、この仲間たちとラグビーをすることが出来なくなることへの悲壮感や喪失感そういった類の涙でした。勿論平学に負けたことは悔しいことですが、それよりもあのアルタイルズが平学に対してあれほど素晴らしいディフェンスが出来ていたことが本当に誇らしく思えました。

きっとこのチームはこれからももっともっとすごいチームに、すごいクラブになっていけると思うから、この素晴らしいチームに関われたことをこれからも誇りにして、これからは、いちファンとしてアルタイルズを見守っていきたいです。
そして、私は後輩や友達、先生方、両親に支えられてこの3年間大好きなラグビーをさせて貰えてきました。迷惑を掛けてきたかもしれない。こんなことを考えると今は感謝しかありません。本当にありがとうございました!!!』


マキ
先日、花園予選の平学戦を持って平工のラグビー部を引退しました。悔しい結果に終わりましたが、最後に楽しく試合ができたので最高に良い形で締めくくれたと思います。小学3年生からラグビーを始めて通算9年目となりますが、この平工での3年間はそれまでの6年間と同等かそれ以上に充実していました。

この3年間、楽しいこともあれば上手くいかないこともありました。特に自分は、不器用で迷惑をかけてしまったかもしれないけど、いつも皆んなに助けてもらいました。だから、逆に皆んなが気持ち良くラグビーが出来るように色々な事を心掛けてきました。これが今の自分を作り上げたと思います。
この3年間を忘れず、これから社会人としてこの事を活かしていきたいと思います。最後になりますが、お世話になった先生、先輩、後輩、本当にありがとうございました。



カズキ
三年間ラグビーをやって、本当に楽しくて充実した三年間でした。
最後の試合が終わって、自分の中には“悔しい”って思いがありました。試合が終わって“悲しい”ではなく“悔しい”でした。試合に負けて悔しいのは当たり前のことで、それ以上に自分の未熟さや弱さに対する思いでした。あの時こうしていればとか、自分の全部を出し切れたのかどうかとか。
三年間の思いを60分間の試合の中で出し切るのは、本当に難しくて、きっと自分は出し切れていなかったんだと思います。なぜなら、ひとつひとつのプレーに対する努力と練習量が圧倒的に相手より少なかったから。
松山先生がミーティングの時“ここの学校だけだよ、週3回しか練習してないの”って言っていたのを覚えています。自分たちが練習している2倍3倍の努力を他の学校はしていて、その分の思いがあって。

自分たちは、松山先生が来て確かに変わりました、部員数もラグビーに対する技術力、思いも。ただ、変わっているといっても本当に少しずつなんです。自分たちにとっては、大きな一歩だと思います。けれど周りから見たら、それは小さな一歩です。

自分はもう引退で、なにも変えることはできません。人に変えて“もらう”のではなく、自分で“変わって”ください。一人で変わるのはきっと大変で苦しいのだと思います、そんなときは、仲間を頼ってください。横を見れば仲間がいて前には導いてくれる先生がいます。きっと、いや絶対に変われると思っています。それだけの思いがあれば。

平工ラグビー部は、松山先生に“アルタイルズ”という名前をもらいました。今、俺たちアルタイルズはスタートラインから少しずつ歩みを進めています。けれど今はまだ、飛ぶための準備です。
これからも、きっと試合に負けることがあると思います、そのたびに“悔しい”と感じてください。悔しい思いが自分たちを成長させ、変えさせてくれます。悔しいを繰り返して繰り返して、いつの日か大空を羽ばたける日が来ると思います。羽ばたいて羽ばたいて、太陽の下に行き周りには何もない広い大空ならば、心の底から嬉しいと思えるはずです。
引退する身だからこんなことが言えるのだと思います。それでも、これを見て少しでも変わろうと思ってくれたらとても嬉しいです。
3年間ラグビーをやって、アルタイルズの一員で入れて、本当に幸せでした。人として成長し、色々な教訓をいただきました。一生の宝物です。本当にありがとうございました。



メウ

一昨日最後の試合が終わり、年間のラグビー人生が終わりました。年生の時は部員も15人しか居なく来年は新入部員がこなかったらどうしようとか話してたのを覚えています。春休みになり松山先生が来てくれてゆうまも練習に軽く参加してくれて、新入部員が沢山入ってきてくれて、今年も来年も安泰だなと思っていました。ガラッと練習時間や練習内容がかわり戸惑っていましたが、年生の時よりも楽しく練習してました。

年生になり自分はBチームになりましたが、それでもラグビーは楽しくてずっと続くと感じていました。夏合宿が終わり、後少ししかないんだなぁと実感し、少しでも長くラグビー部の一員で居たいと思いました。最後の大会まで残りわずかという時に妹の迎えなどで練習日に休むことが増え、試合に出れるのか心配でした。

試合の前日サブとして背番号
17のユニフォームを貰えた時は嬉しかったです。後半の少しな時間しか出れませんでしたが最後の試合でAチームの1人として出れて最高の時間でした。負けてしまいましたが悔いはありませんでした。
年生一人ひとりが一言言っている時に「あぁ、この代は、このチームはここで終わりなのか」と実感しました。その時の気分はこれからは部活はないのかぁとまだこのチームで続けたかったの半々でした。
今まで不甲斐ない先輩でしたがついてきてくれた後輩に感謝してもしきれません。今まで本当に
ありがとうございました。



ジョニー
『試合終了のホイッスルが鳴った時「あぁ、終わったなぁ」と思いながら泣きそうになった。試合に出て泥だらけの部員達を見てめちゃくちゃ泣けてきた。悔しかったり、頑張ってくれた選手達のことを考えたり、なんだか色々と考えてしまってすごく泣いてしまった。前もって前日に「勝っても、負けても泣くよ」と言っていたが自分でもここまで泣くのかと、だけど自分の中のアルタイルズはそれほど大きくそして大切なものになっていたのだと気付いた。

その後、先生の話を聞いて泣いて、内藤、遠藤、慎、桐山、嶋崎の話を聞いて泣いて、自分で話していて泣いてもう泣きに泣きまくった。ひとしきり泣いたあとはみんなで楽しく差し入れを食べて最後は笑顔でアルタイルズらしく終われたと思う。この2年、大変な事も楽しい事もあってそれを平塚工科高校ラグビー部「アルタイルズ」で過ごせた事はきっと自分の人生の中でとても大切なものであり、ずっと忘れられないものだ。』


 内藤組が1年半かけて創り上げてきたアルタイルズ。部員は6名から今や45名。25年ぶりの県大会勝利、地区大会初優勝など、外から見れば順風満帆な結果を残してきたが、決してストレスなく上手くいっている訳ではなかった。クラブの運営方法やあり方について、試行錯誤を続けてきた。強い危機を感じてミーティングを重ねたのは9月に入ってから。10月に入ってやっとクラブの目指すものが定まり、組織のあり方が見えてきた。

 内藤組が最後に残してくれたこの魂のゲームは、アルタイルズが向かうべき方向を明確に示してくれた。リュウトたちのおかげで、我々はやっと「スタートライン」に立つことができたはずだ。彼らの想いを背負い、この日の光景と思いを決して忘れず、やるだけだ。
 
 明日からアルタイルズの新しい章が始まる。